フリクションについて、少し違った考え方

スポーツクライミング、特にボルダリングではフリクション(摩擦)に関するテクニックがどんどん重要性を増しているのではないでしょうか。

かぶった壁での手によるホールディングやヒールフックやトゥフックといったテクニックから、スラブ課題での、ハリボテやボリュームへの足置き、そしてダブルテクスチャの処理など、ボルダリング課題に求められるテクニックはどんどん変化しています。スラブ課題の得手不得手がコンペの勝敗を分けることも多くみられます。

 

そのような状況にもかかわらず、クライミング界でフリクションに関する議論は少なく、対応は進んでいないような気がします。私はフリクションのとらえ方を少し変えるべきだと思っています。フリクションの発生を凹凸による引っ掛かりと考えるのでなく、磁石が金属にくっつくような引力が発生するととらえるべきと考えています。

え、でもそんな引力感じないと思うかもしれませんが、それは、その引力が届く距離がとても短いからです。原子と原子が結合するのに近い距離です。通常の感覚では感じることはできません。さらにいうと、引力が届く距離まで近づいている面積は、見た目の接触面に比べほんのわずかだそうです。ですから、面を強く押すと、引力が作用する面積が増えてフリクションが増加します。

 

表面の凹凸による引っ掛かりでないと仮定して考えると、よくやっていたムーブやテクニックのいくつかが意味がなかったり逆効果だという結論になります。また、経験的には有効だと感じているけど、不安でできないようなテクニックを自信をもって使うことができます。

 

以下に列挙してみます。

 

<意味がない、逆効果なテクニック>

  • 強傾斜のフットホールドを踏む足に下向き(斜め下も)に力を入れる。足を下向きに突っ張る心理は、凹凸に引っ掛けるイメージに起因します。特に、ダブルテクスチャのつるつる面ではできるだけ面に垂直に力をいれなくては...。つるつる面の凸形状をあてにして、つるつる面の横方向から引っ掛けるように踏み込むのも効果は小さいです。
  • ホールドにぐりぐり足裏をこすりつける。この動作はホールドの凹凸にシューズのラバーを変形させ密着させるイメージに起因します。しかし、ダブルテクスチャのつるつる面でこすりつけても、引力がいろいろな部分で発生したり消失したりするだけです。固定して力を加えるほうが有効です。
  • 傾斜面に対して、シューズのエッジを立てる。エッジを立てる動作も引っ掛かりを求めるとっさの心理によると思います。エッジを立てると面に強い力を加えることができず、フリクションが発生しません。
  • 傾斜面の傾斜方向から踵をずらして足を置く。つま先周辺が支点となり、踵が力点になって足が回転しやすくなります。スラブ上での足クロスの時は避けられないのですが、足の力ができるだけ面に垂直にかかることを意識すると有効です。

<有効だが、不安を感じるテクニック>

  • 傾斜面を踏む足に強い力を入れる。これは、力が面に垂直にかかっていない場合などに、シューズのゴムがけずれて滑る経験から、なかなか思いきってできません。しかし、垂直であれば、力を入れるほど引力が生じ、足が吸い寄せられるというイメージをもつと、思い切ってできるのではないでしょうか。 

なかなか、うまく書くことができませんでしたが、伝わればいいと思います。もちろん、そんなこと理解しているという方も沢山いて、ボルダリングの上級者には釈迦に説法だとも思います。ただ、世界レベルのコンペを観ていても、ジムでのスラブ壁やハリボテの経験の差なのかもしれませんが、特に日本のユース選手のなかには、理解している選手とそうでない選手の差がはっきりしているように感じることがよくあります。

 

とりあえず、アップします。

これから修正する可能性大です。